アトピー性皮膚炎による手のかゆみ:刺絡のすばらしい効果

今回は、慢性的なアトピー性皮膚炎に悩む60代女性患者さんの症例です。
この患者様は、長年ステロイドと抗アレルギー薬を服用しながら症状を管理していました。
しかし、2024年11月頃より症状が悪化し、特に両手のかゆみで夜間の睡眠が妨げられる状態になりました。


症状の背景と西洋医学的アプローチ

皮膚科での診察では、新たにデュピクセント(デュピルマブ)を勧められました。

デュピクセントはアトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤で、IL-4およびIL-13という炎症性サイトカインを抑制することで炎症を軽減する薬です。

しかし、副作用への懸念もあり、鍼灸治療を希望され来院されました。

東洋医学的見立て

東洋医学的には、この患者様の状態を”血熱”と考えました。

血熱とは、血液に熱がこもることでかゆみや炎症を引き起こす状態のこと。

特に両手に熱感があり、かゆみが強いため、この血熱を取り除くことを目標にしました。

治療経過

3診目に、 両手の井穴に刺絡を数カ所行いました。

刺絡は東洋医学における出血療法の一つで、熱や滞りを取り除く治療です。

4診目、 刺絡の効果が顕著に現れ、両手のかゆみが劇的に軽減しました。また、手の熱感も大幅に減少しました。

5診目、 両手のかゆみはほぼ消失。患者様は夜間の睡眠が回復し、日常生活におけるストレスも軽減されました。

初診時

5診目

考察

今回のケースでは、井穴刺絡がアトピー性皮膚炎による両手のかゆみ改善に有効でした。

完全な寛解には至っていないものの、患者様のQOL(生活の質)は大幅に向上しました。

また、刺絡はアトピー性皮膚炎以外にも、主婦湿疹、汗疱性湿疹、掌蹠膿疱症など、

手に関連する湿疹に対しても効果的な場合があります。

アトピー性皮膚炎、や手湿疹にお困りのかたは一度ご相談ください。

今年の鍼灸学会で発表します

毎年一度開催される、全国の鍼灸師が一堂に会する最大規模の学術大会が、今年は愛知県で行われます。

わたしは全日本鍼灸学会の会員であり、学会が認定する「認定鍼灸師」を持っています。

認定鍼灸師には、5年に1度の資格更新が必要となります。

更新には、学会参加、研修会の出席、レポート提出などなど…

さまざまあるのでコツコツ準備しておかなければいけません。

もちろん学会出席・学会発表は単位が大きいのでなんとしてもGETしたいところ。

今年の鍼灸学会は地元開催ということもあり、わたしも学会発表を頑張ろうと思います!

今日が抄録の締め切り期限、なんとか提出完了しました。

「圧迫骨折と医療連携」に関する発表を予定しています。

今年はスタッフみんなで学会参加しようと思います!

麻黄湯がインフルエンザに有効

2025年のインフルエンザはA型が中心に流行しており、過去最大の規模で拡大しているようです。

インフルエンザは、早めに治療を開始することが重要ですが、医療機関のひっ迫や、検査キットの不足など、

適切に治療が行えない場合もあります。

麻黄湯は東洋医学で「発熱、悪寒、頭痛、汗が出ない」などの風邪症状に効く漢方薬で、体力が充実している方に適しています。

じつは、麻黄湯は、西洋医学の研究でもインフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果がわかっています。

特に、抗ウイルス薬を使用できない場合の補助治療として有効です。

汗が出るまでしっかり水分を摂取しつつ、麻黄湯を飲むと、辛い症状が緩和することもあります。

ただし、高血圧や妊婦、虚弱体質の方には慎重な使用が求めれるので、

ご心配な方は、お近くの薬局やかかりつけ医に相談してみてください。

また、鍼灸治療でも免疫を調整する効果により、長引く風邪の症状の緩和や、予防に有効です。

新年のごあいさつ:本日より診療開始しました!

新年明けましておめでとうございます。

いつも長岡治療院をご利用いただきありがとうございます。

本日より、2025年の診療がスタートしました。

今日の予約はいっぱいだったのですが、やはりインフルの猛威が影響し、体調を崩される患者様が多くいらっしゃいました。

時節柄、体調管理にはくれぐれもお気をつけください。

スタッフはみんな元気いっぱいで出勤しています!

今年は、新たな予約システムの導入、フタッフ教育の充実、往診事業の拡大など….

よりパワーアップを目指して頑張りたいと思います。

今年も長岡治療院をどうぞよろしくお願いいたします。

顔面神経麻痺(ベル麻痺)が治癒!!

今回は、鍼灸治療と薬物療法の併用により、早期に顔面神経麻痺(ベル麻痺)が改善した症例をご報告します。

症例:60代 男性

症状は右の顔面神経麻痺でした。

11月中旬、朝起きたら右顔の動きが悪いことに気づき、歯磨きで口から水がこぼれる症状があったため、

近くの脳神経外科を受診。MRIでは異常なく、ベル麻痺の診断。

抗ウイルス薬の内服と、ステロイドの点滴を6回行うことになりました。

しかし、治療してもよくなる傾向がないため、当院を受診されました。


40点満点の柳原法(麻痺の評価法)では22点とやや高度の麻痺があり。

右顔面部には熱感あり、衝陽など胃経にも熱の反応。

東洋医学的には風熱による痺証と判断。

まずは、翳風、下関、衝陽、外関に置鍼。

2診目には、翳風-下関を電気鍼で刺激したところ表情筋に収縮がみられたため、予後良好と判断。

5診目から顕著に症状が改善し、柳原法22点から26点に改善。

睡眠の質がよくなり、顎関節症も改善しました。

7診目には顔面麻痺はほぼ改善。柳原法は40点と治癒しました。


11月末に行ったENoG(Electroneurography)では50%でしたので、1ヶ月以内に治癒が見込まれる予後のよい症例でした。

実際に、鍼灸治療においても急速に症状が改善し、後遺症なく治癒することができました。

急性期のベル麻痺は早期に治療を介入することで治癒が見込めます。

慢性期では治療内容がことなりますので、症例にあわせて最適な治療を提供いたします。

顔面神経麻痺でお悩みのかたは一度ご相談ください。

年末年始の診療ご案内

12/29(日)〜1/5(日)までは休診日となります。

この間、メールでのお問い合わせ(病気のご相談)や、ご予約は承れませんのでご了承ください。

鍼灸で逆子が無事改善!

20代女性

21週ごろから逆子の診断、逆子体操を30週から開始するもうまく回転せず。

当院の初診時は31週目でした。

頭はやや右寄りの骨盤位。太渓に強い冷えがあり。

お腹はSoft,胎動も良好。

右の尺位の脈もしっかりと触れているので、予後良好と判断。


治療は、至陰に知熱灸、太渓に棒灸を行いました。

2診目、百会の鍼を追加したあとから頭が横向きに回転。

その後、完全に頭が下に向くものの、元に戻ってしまうが、

3診目エコーにて完全に回転して、頭が下向きになりました。

32週で逆子を治癒することができました。


これまで当院では逆子の症例が67例あります。

そのうち、週2回の鍼灸治療により84.2%に改善が認められました。

初診時の妊娠周期としては28週~33週までをおすすめしています。

33週以降の場合は、帝王切開の前日まで治療を行います。

鍼灸は安全で効果の高い治療です、逆子でお困りの妊婦の方はぜひご相談ください。

忘年会@浜名湖

12.11~12 スタッフと忘年会旅行に行きました!

今年は浜名湖周辺に出かけました。

1日目はホテルでイタリアンコース

慣れないコース料理に緊張しつつも、季節の料理とスタッフのおもてなしに大満足!

2日目は竜ヶ岩洞の鍾乳洞で探検。

1億年以上かけてできた鍾乳洞のパワーに圧倒されました。

そして浜松うなぎをお腹いっぱい食べてスタッフみんな英気を養いました!

今年も残すところあとわずか、年末まで駆け抜けたいと思います!

効果の出せる治療技術:勉強会をしました

今日の勉強会は「効果の出せる治療技術」の実技練習でした。

鍼治療は目的とする組織(筋、神経、関節、軟部組織など)に正確に鍼を刺入できることが重要です。

とにかく硬いところに鍼をする、痛いところに鍼をする、という単純な施術とはまったく異なります。

当院の施術の流れは

①問診や検査で痛みの原因となっている部位を特定する

②目的の部位に正確に鍼を刺入する

③治療効果をチェックする

④効果がでなかったときは、あらためて病態を考えなおす

⑤再度効果の検証

このように鍼灸の臨床を進めています。

今回は、腰痛、肩こり、神経痛などの治療でもっとも基本的な「傍脊柱部刺鍼」について復習しました。

触診の技術、適切な鍼の深さ、刺激の強さなど考えることはたくさんあります。

スタッフみんなでよりよい効果の出せる治療技術を日々研鑽しています。

抗がん剤によるしびれの最新研究と鍼灸の効果

https://research-er.jp/articles/view/139751
日本の研究.comの記事のポイントをまとめました。

ポイント

  • 抗がん薬オキサリプラチンの副作用である「冷たいものに触ると痛い」という症状(冷アロディニア)の原因を特定。
  • 新しい薬「PA-8」が、この症状を和らげるだけでなく、予防できる可能性を発見。

背景

オキサリプラチンは主に大腸がんの治療に使われる抗がん薬で、強い効果を持つ一方、手足が冷たいものに過敏になる「冷アロディニア」という副作用がよく起こります。この症状がひどいと、治療を続けることが難しくなる場合もあります。しかし、これまで有効な治療薬や予防策はありませんでした。

研究の成果

富山大学などの研究チームは、冷アロディニアの原因が「PACAP」という物質と、それを受け取る「PAC1受容体」にあることを突き止めました。そして、PAC1受容体の働きを抑える薬「PA-8」をマウスに投与したところ、次の効果が確認されました:

  1. 症状が軽くなる(治療効果)。
  2. 薬を事前に使うと、症状を防ぐことができる(予防効果)。

今後の展望

今回の研究により、PA-8は神経障害を軽減・予防する新しい治療薬として期待されています。
今後は人を対象とした臨床試験を進めることで、実際の患者さんへの応用を目指します。

鍼灸治療では?

鍼灸治療も抗がん剤による手足のしびれに、有効であるという報告が多数あります。

鍼灸治療では特にパクリタキセルという乳がんなどで使われる抗がん剤による手足のしびれに効果があることがわかっています

鍼灸は末梢神経の血流を促したり、脳に働き鎮痛物質を放出することが、効果のメカニズムだと考えられます。

また、鍼灸は有害事象(鍼灸による好ましくない副作用)がとても少ないのが特徴です。

これらの最新医学と鍼灸の統合が望まれるところです。