「問いカード」で深まるチームの絆

今日の勉強会は、ちょっと変わったワークを取り入れてみました。
その名も「問いカード」。

臨床のこと、性格、価値観、人生の経験、趣味に関する質問をカードにして、

サイコロで出た色のカテゴリーから1枚引く、というルール。

全員でその人の話をしっかり聞き、否定せず、自分の話にすり替えず、ただただ傾聴。

ファシリテーターの私は、エピソードを丁寧に広げていきました。


「自分で気に入っている性格は?」

「大きな決断の基準は?」

「5年後、どうなっていたい?」

「最近、みた映画で心が動いたことは?」

普段はあまり交わすことのない、でもみんなが持っている大切な想いや背景が出てきます。

日々の業務や鍼灸の施術に追われていると、どうしても”作業”になってしまいがち。

でも、この問いカードを通じて、スタッフ一人ひとりの価値観や性格、人柄がふっと見えてきました。

「この人はこんなことを大切にしてるんだ」
「実はそんな思いで施術してたんだ」

そんな新たな気づきに、心がじんわり温かくなりました。

鍼灸の技術だけではなく、「人としてのつながり」があるチームは、やっぱり強い!

患者さんにとっても、居心地のよい空間につながると思います。

たまにはこうして、手を止めて「聴く時間」を持つのも、大事ですね。

秋口の熱中症に注意!

朝晩が少し涼しくなり、「もう熱中症の心配はいらないかな」と思っていませんか?

実は今日、16時ごろ当院の玄関前で、ぐったりと座り込んでいる高齢の女性を発見。

話を伺うと、駅からバスの時間が合わず、歩いて帰る途中だったとのこと。

当院から駅までは、若い方でも徒歩25分以上。高齢の方にはかなりの距離です。

女性は顔が赤く、大量の汗、体も熱を帯びていて、まさに熱中症の症状。

スタッフがすぐに体温や血圧を測り、冷却と水分補給を行ってくれました。

おかげで、徐々に顔色が回復。

無事にタクシーでご自宅へ帰られました。

気温がピークを越えたとはいえ、湿度が高い日が続いています。


体に熱がこもりやすく、まだまだ油断できません。

熱中症を防ぐために大切なこと

  • 水分は「喉が渇く前に」こまめに摂る
  • 無理せず、涼しい時間帯を選んで外出する
  • 高齢者は特に、自覚症状が出にくいので注意
  • 少しでも体調に違和感があれば、すぐに休む

そして、日頃から自律神経のバランスを整えておくことも、実は熱中症対策になります。

鍼灸は、体温調節をつかさどる自律神経に働きかけ、熱がこもりにくい体づくりをサポートします。

「夏バテっぽい」「疲れが抜けない」と感じたら、鍼灸でケアして秋に備えましょう。

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妊娠をきっかけに悪化したアトピー 鍼灸と養生で体も心もラクに


30代の女性。

もともと小児アトピーがありましたが、大人になってからは落ち着いていました。

ところが、2人目の妊娠中から再び、顔や身体にかゆみと赤みが出るようになり、症状が悪化。

ステロイドの塗り薬を使っても、効果が切れるとかゆみがぶり返してしまう状態。


そこで、自己判断で糖質や小麦を制限する食事療法を始めたところ、体重が5kgも減少し、BMI(体格指数)は16にまで低下。

産後に戻っていた生理も、やがて止まってしまいました。


そんな中、当院を初めて受診されたのはX年6月でした。


脈や体の状態から「血虚血瘀(けっきょけつお)」と見立てました。

これは、体を巡る血が足りず、さらに血の流れも滞っている状態。

治療としては、「活血化瘀(かっけつかお)」「養血(ようけつ)」という方針で、

三陰交に鍼を15分ほど置きました。


あわせて養生指導も行いました。

過度な食事制限はやめて、糖質や小麦も含め、しっかり食べるようにアドバイス。

ステロイドは“1FTU(ワンフィンガーチップユニット)”と呼ばれる適量を、しっかり塗るようお伝えしました。


すると、2回目の来院時には顔の赤みが少し引いていました。

3回目には体重が1kgほど増え、脈にも力が出てきたため、今度は百会に**刺絡(しらく)**を行いました。

これは、ツボから少量の血を出して巡りを促す方法です。

5回目の治療では、関節のかゆみや顔の赤みはほぼ消え、夜もぐっすり眠れるように。

今ではステロイドを使わなくても、かゆみがコントロールできるようになりました。


適切な養生アドバイスと、タイミングを見極めた刺絡の判断が功を奏しました。

何より、患者さんとの信頼関係がしっかり築けていたことが、大きな要因と感じます。

西村先生のすばらしい症例でした。

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夏バテ、その不調…東洋医学でリセットしませんか?

暑さが本格化してきて「なんだか調子が出ない…」と感じる方が増えているのではないでしょうか。

もしかすると 夏バテ のサインかもしれません。

東洋医学では、夏は「心(しん)」や「脾(ひ)」の働きに負担がかかりやすい季節と考えます。

  • クーラーの冷えによる 神経痛・関節痛
  • 酷暑による 倦怠感・疲労感・頭痛・食欲不振
  • 暑さで動かなくなって 肩こり・腰痛

このような症状を「夏バテ」と一括りにせず、東洋医学では体質や生活習慣を見て、原因を細かく見ていきます。

例えば、冷房で身体が冷えている場合は「寒邪」が巡りを悪くし、痛みやだるさにつながると考えます。

鍼灸では、ツボを使って体の中から温め、血の巡りを整えることで自然治癒力を高めます。

また、汗をかきすぎて「気」や「水分」が不足すると、疲労感や頭痛、食欲不振が起きやすくなります。

こうしたときは、「脾」を元気にするツボやお灸で、内臓の働きをサポート。

さらに、運動不足で体が固まってしまった肩や腰には、鍼灸で筋肉の緊張をゆるめて、滞った巡りを改善します。

「今年の夏は、なんだか例年以上にしんどい…」

そんな時こそ、東洋医学の知恵と鍼灸の力を取り入れて、心と体を整えてみませんか?

月曜恒例・院内勉強会レポート!

今週の勉強会では、「ジャンパー膝(膝蓋腱炎)」について、今井先生がレクチャーを担当しました。

今井先生はアスレチックトレーナーの資格を持っており、スポーツ障害に関する専門的な知見をシェアしてくれました。

当院でもジャンパー膝を含むスポーツ障害の症例は多く、今回も彼の専門性が活かされた実例でした。

ジャンパー膝は、ジャンプやダッシュなどで繰り返し大腿四頭筋が使われることで、膝蓋靭帯に過度な牽引力がかかり、炎症を引き起こすのが主な原因です。

初期対応では、安静と保存療法が大切。

さらに、適切なストレッチやセルフケアを取り入れることで、回復が早まることも学びました。

鍼灸治療の現場では、大腿四頭筋の筋緊張を緩和し、関連する経絡を整えることで、膝の痛みが軽減されることを実感しています。

長岡治療院には、漢方・美容・看護・スポーツなど、さまざまな分野のプロフェッショナルが在籍しています。

それぞれの専門性を共有することで、院全体のレベルアップにもつながっています!

「魄」と「扁桃体」の不思議な共通点

前回の記事では、コロナ感染後の嗅覚・味覚障害について、症例をもとに、
「肺」と「魄(はく)」の関係について考察しました。

今回はその続きです。

「魄」を現代医学的にどう理解できるのか、鍼灸ではどのようにアプローチするかお話します。


■「魄」は脳科学的にいうと「扁桃体」にあたる

東洋医学では、「魄」は本能的な感覚、五感、不安・恐れなどと関係しています
この「魄」の働きは、現代医学でいう**扁桃体(へんとうたい)**の機能に近いと考えています。

扁桃体は、恐怖や不安、怒り、驚きといった感情の処理に関与しています。

匂い、音、光などに対して「危険・安全」を無意識に判断します。

例えば、草むらを歩いていて、急にヘビが出てきたらびっくりして逃げますよね?

これは扁桃体が「危険、逃げろ!」と指令をだしているのです。

扁桃体が過敏になっていると、たとえ実際には危険でなくても、過剰に反応してしまい、体の不調やストレスとして現れます。


■「魄」の安定には“安心できる環境”が大切

東洋医学的にも、西洋医学的にも共通するのは、
「魄」=「扁桃体」のバランスを取るには、安全・安心を感じられる環境や人間関係が重要です。

たとえば、

  • 馴染みのある場所で過ごす
  • 信頼できる人と話す
  • 自分の感覚や感情を否定されずに受け入れられる

こういう“安心の場”があると、扁桃体は過剰に反応しなくなり、自律神経のバランスも整っていきます。
鍼灸院がそのような「場」になることも、わたしたちは大事にしています。


■肺-魄-衛気を整える鍼灸治療

では、実際の鍼灸治療ではどのようなアプローチをするのでしょうか。

当院では、肺-魄-衛気(体を守るエネルギー)の連携を整えるために、以下のようなツボを使用することがあります。

● 肺兪(はいゆ):背中の肺の働きを高めるツボ

肺の気を補い、呼吸器のバランスを整えるだけでなく、精神的な安定にもつながります。

● 申脈(しんみゃく):足の外くるぶしの下にあるツボ

衛気を調整する作用があり、身体を守るエネルギーを高めてくれます。

HSP傾向の方、感覚過敏の方に有効なポイントです。

ツボに鍼やお灸を行うことで、身体と感情のつながりを整え、

「本能的な感覚の安定=魄を養う」ことを目指します。

コロナ後遺症の嗅覚障害:魄と肺の関係

今日は、毎週月曜に開催している院内勉強会を行いました。
今回のテーマは「コロナ感染後の嗅覚・味覚障害」について。

当院ではこれまでに、多くの方が鍼灸治療によって症状の改善を実感されています。

一方で、なかなか改善が難しいケースもあります。

今回は、そうした難治例のひとつを取り上げ、スタッフ全員でディスカッションしました。

取り上げたのは、ある女性の症例です。


この方はコロナ感染後、数ヶ月経ってから嗅覚障害が出現。
さらにその後、味覚障害も現れました。
当院に来院されたのは、感染から約1年が経過してからでした。

現在も香りや味がほとんど感じられず、「何を食べても美味しくない」「生活の楽しみが減った」と話されており、

非常にストレスを抱えておられます。

もともと香りに敏感で、人混みやアロマなどの強い香りが苦手だったそうです。

耳鼻科では「治らない」と言われ、途方に暮れていたところで、当院を受診されました。


コロナ後遺症と味覚・嗅覚障害

データでは、**コロナ感染者のおよそ5〜10%**に、嗅覚・味覚障害が長期に残るとされています。
(文献や調査によって数字は異なりますが、一定数の方が長引く後遺症に悩まされています)

しかし現在のところ、確立された根本治療法はありません。


東洋医学から見た嗅覚・味覚障害

東洋医学的に考えると、嗅覚や味覚は次のような臓腑と関係が深いとされます。

  • 嗅覚:肺
  • 味覚:脾

脾は消化吸収に関わるシステム全般を指しますが、今回のケースでは特に大きな問題は見られませんでした。

一方でこの方は、花粉症や慢性鼻炎の既往があり、もともと呼吸器があまり強くない傾向があったため、肺に関わる失調が原因と考えられました。


肺と「魄(はく)」の関係

東洋医学では「肺は魄を蔵す」と言われます。
「魄」は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった**五感や本能的感覚(快・不快)**を司るものです。

  • 匂いや音、光、寒暖差などに敏感
  • 人混みや強い刺激が苦手
    といった方は、「魄」が弱っている状態と捉えることができます。

近年よく耳にする**HSP(Highly Sensitive Person)**も、東洋医学的には「魄の虚」と関係しているかもしれません。

また、「魄」は外的ストレスから身を守る「衛気」とも密接に関係しています。
そのため、風邪をひきやすい、環境変化に弱い、疲れやすいといった体質の方は、魄を元気にする治療が効果的と考えられます。


この患者さんは、もともとニオイに敏感であったり、コロナに罹患したことからも、肺や魄が弱っていた状態と考えられます。

では、どうすれば肺や魄を強くすることができるのでしょうか?

それは、また次回の勉強会で深掘りしていきたいと思います。どうぞお楽しみに。

ナイチンゲールと東洋医学:「自然治癒力」の考え方

ナイチンゲールといえば、近代看護の母。
彼女の著書『看護覚え書』を読んでみると、ただの看護の教科書ではありません。

実は、東洋医学や鍼灸が大切にしている「自然治癒力」の考えと、とてもよく似た部分があります。

たとえば彼女はこう言っています。

「看護とは、自然が人間を癒すのを助けること」

人間には本来、自分を癒す力が備わっています。

それを引き出すのが、看護であると言っています。

これは、東洋医学の考えかたと繋がります。

鍼をしたり、お灸をすえたりすることは、気の巡りを整え、「治る」をそっと後押ししているのです。

そしてもう一つ、大事なのが“環境”。

ナイチンゲールは、清潔・換気・静けさなど、環境整備の重要性を何度も説いています。

鍼灸院でも、まさに同じ。

  • 清潔な空間
  • しっかり換気された部屋
  • 人の気配を感じられる、安心感のある雰囲気

私たちも、来てくださる方がホッとできるように、こうした環境づくりに力を入れています。

「病気を治す」のではなく「体が治ろうとする力を支える」
この視点は、看護にも鍼灸にも、すべての対人援助に必要な視点です。

もし『看護覚え書』をまだ読んだことがない方は、ぜひ一度読んでみてください。

鍼灸や東洋医学に興味のある方なら、きっと新しい発見がありますよ。