「魄」と「扁桃体」の不思議な共通点

前回の記事では、コロナ感染後の嗅覚・味覚障害について、症例をもとに、
「肺」と「魄(はく)」の関係について考察しました。

今回はその続きです。

「魄」を現代医学的にどう理解できるのか、鍼灸ではどのようにアプローチするかお話します。


■「魄」は脳科学的にいうと「扁桃体」にあたる

東洋医学では、「魄」は本能的な感覚、五感、不安・恐れなどと関係しています
この「魄」の働きは、現代医学でいう**扁桃体(へんとうたい)**の機能に近いと考えています。

扁桃体は、恐怖や不安、怒り、驚きといった感情の処理に関与しています。

匂い、音、光などに対して「危険・安全」を無意識に判断します。

例えば、草むらを歩いていて、急にヘビが出てきたらびっくりして逃げますよね?

これは扁桃体が「危険、逃げろ!」と指令をだしているのです。

扁桃体が過敏になっていると、たとえ実際には危険でなくても、過剰に反応してしまい、体の不調やストレスとして現れます。


■「魄」の安定には“安心できる環境”が大切

東洋医学的にも、西洋医学的にも共通するのは、
「魄」=「扁桃体」のバランスを取るには、安全・安心を感じられる環境や人間関係が重要です。

たとえば、

  • 馴染みのある場所で過ごす
  • 信頼できる人と話す
  • 自分の感覚や感情を否定されずに受け入れられる

こういう“安心の場”があると、扁桃体は過剰に反応しなくなり、自律神経のバランスも整っていきます。
鍼灸院がそのような「場」になることも、わたしたちは大事にしています。


■肺-魄-衛気を整える鍼灸治療

では、実際の鍼灸治療ではどのようなアプローチをするのでしょうか。

当院では、肺-魄-衛気(体を守るエネルギー)の連携を整えるために、以下のようなツボを使用することがあります。

● 肺兪(はいゆ):背中の肺の働きを高めるツボ

肺の気を補い、呼吸器のバランスを整えるだけでなく、精神的な安定にもつながります。

● 申脈(しんみゃく):足の外くるぶしの下にあるツボ

衛気を調整する作用があり、身体を守るエネルギーを高めてくれます。

HSP傾向の方、感覚過敏の方に有効なポイントです。

ツボに鍼やお灸を行うことで、身体と感情のつながりを整え、

「本能的な感覚の安定=魄を養う」ことを目指します。