頚肩部痛と空間論

鍼灸専門である当院では

肩こりが主訴でもかなり慢性化して重症か

頚椎の異常や、頚肩部の痛みを訴える症例が多い

いわば市井の按摩さんで楽になるような方は来院されない

数年来の痛みや凝り不快感、頭痛やのぼせ耳鳴り眩暈を伴う複雑な症例でも

現在の研究テーマである「空間論」による

気の偏り「偏在」を整える目的での少数鍼が

威力を発揮する

空間的な気の偏りが整っていくと

治療中に患者さんが変化に気付き

「気の動き」を自覚し、緊張が緩み、寒熱の偏りが整っていく

治療後の変化に「スゴイ!」「何これ!」と驚きの声を上げることが珍しくない

小児発達障害

2~3才で言葉のコミニュケーションができないお子さんに対して

小児鍼はとても有効かつ積極的な治療法となる

体質や気質によって効果の発現にばらつきがあるが

2~3回の治療で言葉が出始め、周囲が変化に驚くといったケースもある

言葉は耳から脳にインプットされメモリーできていても

自分の言葉として情報を処理してアウトプットができない

小児鍼で軽い皮膚刺激を全身に施術することは

脳循環の改善に繋がり、アウトプットが始まると

言葉のメモリーが多ければ日に日に言葉が増えていく

御両親はお子さんに対して神経質にならず

おおらかに接し、沢山褒めてあげること

スキンシップを怠らないことがとても大切

発達障害を病気と捉えずに”個性”と認識して接することだ

統合失調症経過

20代♀

その後の経過は

週に一度の治療を続けて

数種類あった薬は減り

統合失調症への治療薬が1種一日1錠のみになった

幸せな結婚を経て妊娠が確認された模様

発症当初、医師から「薬は一生飲み続けなければならないので、妊娠も難しい」

と心ないことを言われたのだ

大丈夫、薬は止められる、鍼でサポートしているから

三叉神経痛著効

80代♀

数年前から右三叉神経痛発症

あまりの痛みに入れ歯が入れられず

流動食のみであったが

数回の治療で一日3回の抗けいれん剤の内服を

頓服程度に減量しても激痛がほとんど緩解し

入れ歯が入るようになった

空間診による右上前の気の偏在と診たて

百会右 補腎で右腎兪に鍼をした結果である

慢性関節リウマチの治療

かれこれ10数年往診に伺っている慢性関節リウマチの患者さん

寝たきりではなく、日常生活動作はベッド周囲で何でもできる

初診時は冬になると全身の関節の痛みや下肢の強い冷えを訴えていたが

今年の強い寒波のさなかでも、体調は良好

東洋医学でいう”補腎”の治療を続けている

関元への施灸と、湧泉の軽い指圧(鍼ができないところなので)

布団の中で冷えを感じないので、腎気が高まり、陰陽のバランスが整ったと考えられる症例

頚部ジストニア治癒

30代♂

5年前より左頚部ジストニア発症

ボツリヌス菌注射をするも一時的に改善するが治らない

鍼治療を根気よく続けて5年

長年内服してきたアーテン内服を中止しても悪化なし

現在は再発予防で月に一度の治療を継続中

極めて経過は良好である

今年のスギ花粉

環境省は27日今年の花粉飛散量の予測を発表した

スギ花粉の飛散時期は例年より遅く

東海地方では2月中旬~3月中旬

飛散量は非常に多かった昨年より少なく

例年並みかやや少なめとなる見込みとのこと

1月の低温が続いているため開花が遅くなりそうだ

しかし、アレルギー性鼻炎の患者さんはこの時期から

確実に増えており、肝鬱(ストレスを強く受けている状態)

の方は特に注意が必要で、結膜炎まで至るケースが少なくない

鍼灸で十分対応できるので、薬だけに頼らずに試してほしい

超旋刺

非常に細い鍼(1番~01番)を用いて

経穴に切皮し(一mm程度)左回転で

一分間に数百回の高速回旋するという治療を

”超旋刺”という

愛知県鍼灸専門師会の研修会で理論と実技の講演があり

最近試験的に臨床に取り入れている

診断の基本は中医学での弁証は勿論、

そこに”空間診”による少数鍼の成果はすでに報告した通り素晴らしい

しかし、最後にとりきれない軽度の痛みが残る場合に

”超旋刺”を補助的に使うと、上手くいくことを経験してきた

追試を重ねているが、非常に軽微な刺激なので患者さんの体の負担はなく

北辰会方式を逸脱するものでもないので、

あくまで補助的な処置としてではあるが

確かに有効な手技で、さらに発展する可能性がある

頚肩こりの弁証

頚肩こりは初診患者さんの30%に見られるありふれた症状

しかし、原因は多岐にわたるので

きちんと治すためには東洋医学的弁証論治が必要だ

【西洋医学による原因】

1・姿勢の不良

2・頚椎の異常(変形・アライメントの異常)

3・頚椎椎間板ヘルニア

4・肩関節疾患に随伴するもの

5・顎関節症やかみ合わせの不良・歯列の乱れによるもの

【東洋医学による原因】

1・気滞(気の滞り)

2・お血(血の滞り)

3・肝陽上亢(陽気の亢進)

4・肝鬱化火(怒り等の感情の高ぶること)

5・肝火上炎(気が強く上に突き上げ熱化すること)

6・腎陰虚による陰虚陽亢(顔のほてり等も伴う)

7・血虚(血の不足)

8・気血両虚(気と血の不足)

9・湿痰(水の停滞)

10・空間論による気の偏在

ざっと挙げるだけでこれだけ分類されるので

初診時には肩こりと言えども詳細な問診が必要不可欠だ

筋の緊張を緩める治療でもある程度良くなるが

慢性疾患を根治するためには弁証が絶対必要である

また、随伴症を伴って肩こりがある場合には

一般的な局所治療だけでは、鍼の数が増えていくだけで

医療とはいえなくなる

たかが肩こりであっても、医療として鍼灸治療を行うか否かで

技量の差が如実に出るのである

ただの”慰安ハリ”でなく、あくまで”医療”として

治療を考えているかが大切だ

大寒とフキノトウ

今日は二四節気の”大寒”

一年で最も寒い時期

日本の南を次々と前線が通過してこの地方は冷たい雨になったが

内陸部では雪が降り続いている

冬至を過ぎてからは風が弱く天気の良い日は

太陽の陽気が高まっていることを実感する

気温は低くても日中は暖かさを感じる

季節は確かに春に向かっている

フキノトウが芽吹くのもこの季節

フキノトウの苦味は降気作用を持っている

つまり、老廃物を降ろして、下から排泄する作用がある

冬眠から覚めたクマが真っ先に食べるのがフキノトウと言われている

これは、冬眠中に溜まった便を排泄する効能があるからである

立春に向けて陽気が高まっていくこれからの季節には最適な食材だ