投稿

卒後教育

鍼灸学校は増えても,治療ができない鍼灸師が生徒に教え

臨床経験がない若い鍼灸師が増えている

学校教育の問題については以前にも述べたが

厚労省が昨年発足させた≪漢方鍼灸を活用した日本型医療の創生≫

という命題への答えはいまだ得られていない

日本の鍼灸は世界標準で見渡しても「匠の技」である

非常に繊細な技術を持っている「腕の良い鍼灸師は」市井に沢山いるはず

しかし、その匠の技を若い鍼灸師に伝えるシステムがない

卒後教育もシステム化されていない

免許の更新制度や、専門鍼灸師のデザインを業団で創生する必要に迫られている

鍼灸院臨床研修制度

(社)愛知県鍼灸専門師会では今年から

鍼灸院臨床見学制度を始めることが決まった

鍼灸学校の学生、卒業後5年以内の未開業者に対して

鍼灸専門治療院を開放し自由に見学してもらおう・・という制度で

鍼灸臨床現場を見学することで,

将来開業を目指す若い鍼灸師に

自信を持ってもらいたい,という思いから始まった

小泉政権下で規制緩和がされて以来鍼灸専門学校、鍼灸大学は激増したが

卒業後に鍼灸の臨床を学べる場はごく限られているのが現状だ

臨床を知らずに開業する未熟な鍼灸師が増えることは

鍼灸の国民への期待を裏切ることにつながりかねない

小院も微力ながら治療院をオープンにして

いつでも見学できるようにした

このような制度が普及し、教育機関での必修単位として文部科学省や厚生労働省が

動いてくれると業界も大きく変わっていくのだが・・・

専門学校の教育

日本に鍼灸の専門学校は現在90校以上あって3年制である

鍼灸大学は全国に9校あって4年生で、大学院を併設するところもある

今日母校の鍼灸専門学校を訪問し、学生の治療院「臨床見学制度」の説明をしてきた

「臨床見学制度」とは(社)愛知県鍼灸専門師会が主催し

鍼灸学校の3年制を対象に、夏休みに鍼灸専門の治療院を複数見学できる制度である

鍼灸学校の学生にとって臨床の現場を見学することはほとんどなく

専門学校併設の鍼灸院では治療経験がほとんど得らないのが現状

そこで、鍼灸専門で、ある程度患者さんを多く診ているかつ

見学受け入れOKの治療院を登録し、希望する治療院を何件でも見学させるのである

臨床の現場の空気を読み、臨床の緊張感を感じて、卒後の勉強、開業の参考にしてもらうことが目的

我々は治療院を解放して自由に見学する受け入れ態勢をとっているので

在学生は一人でも多く来てもらいたい

学校教育

鍼灸師は独立開業権のある国家資格である
医療系の国家資格で開業権があるのは他に
医師・歯科医師・柔道整復師・マッサージ師・助産師だけであり
カイロ・整体などは開業していても国家資格ではないのである
このことはほとんど認知されていない

鍼灸師の養成学校は現在全国で3年制の専門学校91校と4年生の鍼灸大学が7校があるが、
規制緩和の悪影響で、数年前と比べて学校の数は急増しているのである
専門学校の増加は当然学生の質の低下を招き、国家試験の合格率も低下傾向にある

今問題なのは、学校教育システムの不十分さである、薬剤師は6年制大学になった
鍼灸の専門学校では多くが授業時間が一日4~5時間、土日祝日は休み、
これでは3年間で臨床ができる鍼灸師を養成することは土台無理な話である
専門学校によっては臨床治療室を設けて鍼灸臨床を在学中に
学ばせているところもあるが、臨床経験が充分とはとてもいえない
厚労省が卒前の臨床研修を必須単位にしていないので、学校によってばらつきがあるのである。

私見としては、鍼灸師の養成学校は将来全て最低4年制の大学にし、
国家試験に合格後は、大学内の付属鍼灸院でインターンとして
2年間の卒後研修を受けることを義務化すべきと考える

厚労省の研究班「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生のための調査研究」
のなかでは、東洋医学としての漢方薬と鍼灸治療が車の両輪として
国民の期待にこたえられる医療となることが議論されている
その為には今の鍼灸学校の教育システムでは不十分であることが問題とされている
漢方を扱う薬剤師が6年生大学になったいま、鍼灸師だけが3年制の専門学校で
は車の両輪が揃わないではないか、鍼灸師の資質向上のための法整備は急務である