コロナ後遺症の嗅覚障害:魄と肺の関係

今日は、毎週月曜に開催している院内勉強会を行いました。
今回のテーマは「コロナ感染後の嗅覚・味覚障害」について。

当院ではこれまでに、多くの方が鍼灸治療によって症状の改善を実感されています。

一方で、なかなか改善が難しいケースもあります。

今回は、そうした難治例のひとつを取り上げ、スタッフ全員でディスカッションしました。

取り上げたのは、ある女性の症例です。


この方はコロナ感染後、数ヶ月経ってから嗅覚障害が出現。
さらにその後、味覚障害も現れました。
当院に来院されたのは、感染から約1年が経過してからでした。

現在も香りや味がほとんど感じられず、「何を食べても美味しくない」「生活の楽しみが減った」と話されており、

非常にストレスを抱えておられます。

もともと香りに敏感で、人混みやアロマなどの強い香りが苦手だったそうです。

耳鼻科では「治らない」と言われ、途方に暮れていたところで、当院を受診されました。


コロナ後遺症と味覚・嗅覚障害

データでは、**コロナ感染者のおよそ5〜10%**に、嗅覚・味覚障害が長期に残るとされています。
(文献や調査によって数字は異なりますが、一定数の方が長引く後遺症に悩まされています)

しかし現在のところ、確立された根本治療法はありません。


東洋医学から見た嗅覚・味覚障害

東洋医学的に考えると、嗅覚や味覚は次のような臓腑と関係が深いとされます。

  • 嗅覚:肺
  • 味覚:脾

脾は消化吸収に関わるシステム全般を指しますが、今回のケースでは特に大きな問題は見られませんでした。

一方でこの方は、花粉症や慢性鼻炎の既往があり、もともと呼吸器があまり強くない傾向があったため、肺に関わる失調が原因と考えられました。


肺と「魄(はく)」の関係

東洋医学では「肺は魄を蔵す」と言われます。
「魄」は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚といった**五感や本能的感覚(快・不快)**を司るものです。

  • 匂いや音、光、寒暖差などに敏感
  • 人混みや強い刺激が苦手
    といった方は、「魄」が弱っている状態と捉えることができます。

近年よく耳にする**HSP(Highly Sensitive Person)**も、東洋医学的には「魄の虚」と関係しているかもしれません。

また、「魄」は外的ストレスから身を守る「衛気」とも密接に関係しています。
そのため、風邪をひきやすい、環境変化に弱い、疲れやすいといった体質の方は、魄を元気にする治療が効果的と考えられます。


この患者さんは、もともとニオイに敏感であったり、コロナに罹患したことからも、肺や魄が弱っていた状態と考えられます。

では、どうすれば肺や魄を強くすることができるのでしょうか?

それは、また次回の勉強会で深掘りしていきたいと思います。どうぞお楽しみに。