抗がん剤によるしびれの最新研究と鍼灸の効果

https://research-er.jp/articles/view/139751
日本の研究.comの記事のポイントをまとめました。

ポイント

  • 抗がん薬オキサリプラチンの副作用である「冷たいものに触ると痛い」という症状(冷アロディニア)の原因を特定。
  • 新しい薬「PA-8」が、この症状を和らげるだけでなく、予防できる可能性を発見。

背景

オキサリプラチンは主に大腸がんの治療に使われる抗がん薬で、強い効果を持つ一方、手足が冷たいものに過敏になる「冷アロディニア」という副作用がよく起こります。この症状がひどいと、治療を続けることが難しくなる場合もあります。しかし、これまで有効な治療薬や予防策はありませんでした。

研究の成果

富山大学などの研究チームは、冷アロディニアの原因が「PACAP」という物質と、それを受け取る「PAC1受容体」にあることを突き止めました。そして、PAC1受容体の働きを抑える薬「PA-8」をマウスに投与したところ、次の効果が確認されました:

  1. 症状が軽くなる(治療効果)。
  2. 薬を事前に使うと、症状を防ぐことができる(予防効果)。

今後の展望

今回の研究により、PA-8は神経障害を軽減・予防する新しい治療薬として期待されています。
今後は人を対象とした臨床試験を進めることで、実際の患者さんへの応用を目指します。

鍼灸治療では?

鍼灸治療も抗がん剤による手足のしびれに、有効であるという報告が多数あります。

鍼灸治療では特にパクリタキセルという乳がんなどで使われる抗がん剤による手足のしびれに効果があることがわかっています

鍼灸は末梢神経の血流を促したり、脳に働き鎮痛物質を放出することが、効果のメカニズムだと考えられます。

また、鍼灸は有害事象(鍼灸による好ましくない副作用)がとても少ないのが特徴です。

これらの最新医学と鍼灸の統合が望まれるところです。

がん支持療法としての鍼灸

がん治療は患者さんの身体と心に多大な負担をもたらします。

そのため、症状の緩和や生活の質(QOL)を向上させるための治療としてがん支持療法が重要です。

がん支持療法とは、病気そのものの治療ではなく、副作用や症状の軽減、心身のケアを目的とした治療やケアのこと。

鍼灸は、このがん支持療法の一環として注目されています。

鍼灸治療が支持療法として有効な理由

鍼灸治療は、さまざまながんの症状や治療の副作用を緩和するために役立ちます。以下の症状に対するエビデンスが示されています。

  • 化学療法による末梢神経障害(しびれ)
    化学療法後に多くの患者が経験する手足のしびれは、日常生活に支障をきたすことがあります。鍼灸はこれらの神経症状を軽減することが研究で示されています。
  • 吐き気や嘔吐
    鍼灸は、化学療法や放射線療法による吐き気や嘔吐を緩和する効果が報告されています。
  • がんによる痛み
    がんが進行することで生じる痛みを和らげ、患者さんの生活の質を向上させることができます。
  • 精神的ストレスや不眠
    鍼灸にはリラクゼーション効果があり、不安感やストレスを軽減し、睡眠の質を向上させることが期待されています。

当院の取り組み

当院では、35年以上の治療経験をもとに、がん患者さんの症例を多く積み重ねてきました。

治療方針としては、標準治療との併用を強く推薦しています。

標準治療をベースに、鍼灸治療を取り入れることで、症状の緩和やQOL向上を目指します。

また、患者さん一人ひとりに適した治療を提供するため、初回の問診には1時間ほど時間をかけて丁寧に行っています

これまでの病歴や治療内容、現在の症状を詳しく伺い、最適な治療計画を提案します。

ご相談ください

がん治療に伴う副作用や症状の緩和にお悩みの方、またがんそのものによる痛みや精神的な負担でお困りの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。

鍼灸治療を通じて、少しでも患者さんの心と身体が楽になるようお手伝いさせていただきます。
あなたのQOL向上を全力でサポートします。

「自分らしさ」ってなんだろう:輪読会をやりました

先日、同朋大学で行われた磯野真穂さんの講演会に参加してきました。

テーマは「自分らしさ」。

平成以降、この言葉は私たちの日常に溢れるようになり、聞き慣れたフレーズになっています。

しかし、それが一体何を意味するのか、私たちはどれだけ理解しているのでしょうか。

磯野さんの著書『他者と生きる』では、「日本人には“個”が根づきにくい」という興味深い視点が示されています。

この考え方に触れたとき、「自分らしさ」についてみんなと一緒に考えたいと思い、スタッフと輪読会を開くことにしました。

正直、この本はとても難解です。

一人で読むには少しハードルが高い部分もありましたが、輪読会ではみんなで読み合い、「これってどういうことだろう?」と意見を交わすことができました。

特に「自分らしいってどういう意味なんだろう?」という問いには、様々な視点からの意見が飛び交い、大いに盛り上がりました。

もちろん、これに「答え」が出るわけではありません。

でも、他者との関わり方や自分自身について深く考える時間を持つことで、自分の世界観が広がった気がします。

それは一人で本を読むだけでは得られない、貴重な経験だと思います。

「自分らしさ」という言葉に少し疲れを感じるとき、あるいは迷ったとき、誰かと一緒に考える機会を持つことで新しい発見があるかもしれません。

磯野さんの言葉を借りれば、私たちは「他者と生きる」存在ですから、そのプロセスこそが大切なのではないかと思います。

皆さんにとっての「自分らしさ」とは何ですか?ぜひ考えてみてください

院長、毛利先生Happy Birthday!

11月20日は毛利先生の誕生日でした!

1日違いで、院長は11月21日が誕生日です。

なんと1992年で同い年!!

原駅近くにある「ラファブリックデュスリール」のショートケーキをいただきました!

あっさりなクリームとラズベリーやイチゴの酸味が相性バッチリ

みんなで美味しくいただきました!

寒暖差による不調にも鍼灸を

11月23日から24日にかけて日本列島が西高東低の冬型の気圧配置となり、太平洋側でも冷え込みが強まるとのことです。

このような気象において、東洋医学の視点から注意点をまとめました!

  • 寒暖差への対応:気温があがると毛穴が開き、冷えの邪気(寒邪)が侵入しやすくなります。すると、風邪、寝違い、ぎっくり腰、神経痛、リウマチなどのが悪化しやすくなります。睡眠時、首や肩周りを冷やさないようタオルを巻いたり、ハイネックを着用して体温調節を心がけましょう。

  • 乾燥対策:乾燥の邪気(燥邪)により毛穴が閉じ、体にこもった熱が体の表面に現れます。するとアトピーや皮膚疾患の悪化がみられます。適度に運動して熱を発散したり、香辛料を控えめにして体に熱をこもらないように注意しましょう。また部屋の保湿やこまめな水分補給を忘れずに!

鍼灸治療は、このような寒暖差による免疫の低下や、自律神経の不調に対してとても効果的です。

この時期の不調でお困りの方はご相談ください。

絵本の魅力 〜大人になってから感じる深み〜

先日、詩人の谷川俊太郎さんが亡くなられたというニュースを見て、心がぎゅっとなりました。

彼の詩や絵本に、学校の授業などで触れたことがある人はきっと多いのではないでしょうか。

谷川さんの作品には、大人も子供にも、なぜか心に残る普遍的な魅力があったと思います。


子供の頃に読んだ絵本って、大人になってから読み返すと、全然違う景色が見えることがありませんか?

例えば、絵の中に隠された細かい工夫や、作者が伝えたかった深いメッセージ

子供の頃には気づけなかったことが、どんどん浮かび上がってきます。


最近、「スイミー」を改めて読み直してみたのですが、小さな魚が仲間をまとめて大きな魚の形を作るあの物語。

今読むと、団結することや、知恵で困難を乗り越える力の大切さが、心に響きます。

「そうか、人生ってそうやってみんなで支え合って進んでいくものだな」と思ったりします。

大人になると、絵本の持つシンプルな言葉や絵が、逆に深く刺さることってありませんか?

人生経験を重ねて、感受性が豊かになったからこそ、「ああ、この作品にはこういう思いが込められていたんだ」って気づく瞬間がある。

子供の頃はただ楽しいだけだったものが、今では感慨深いものに変わる。そんなことを実感しています。

当院では、待合室にいくつか絵本を置いています。ちょっとした待ち時間にぜひ手に取ってみてください。

子供の頃の思い出に浸りながら、少し心を休めていただけたら嬉しいです。

中部大学での東洋医学講義-実践編をしました-

先日、中部大学で行った東洋医学の講義の第2回目は、実践的な内容として「鍼灸治療の体験」をテーマに進めました。

今回は実際に診察や、治療を体験してもらいました!

東洋医学には「望聞問切」という診察の基本があり、視覚・聴覚・嗅覚・触覚など多面的な観察を通じて身体の状態を把握します。

講義では、簡単な問診を行い、その後に体表観察を実践。

舌や皮膚の色、腹部の状態をチェックしながら、東洋医学の診察方法を学んでもらいました。

その後、実際に鍼を使った治療を体験していただきました。

今回使用したのは、「たった1本の鍼」だけ。

東洋医学の治療はシンプルでありながら、その効果が実感できるのが特徴です。

治療後、参加者からは「舌の色が変わった」「腹部の緊張が和らいだ」「手の震えがおさまった」など、

実際に目に見える変化や身体の変化を感じる声が続出しました。

参加者の皆さんは効果に驚き、東洋医学の奥深さや魅力に興味津々。

治療後の明るい表情がとても印象的でした。

「こんなに少ない施術で、ここまで変化があるんですね」といった感想も多く、東洋医学への理解が深まったように感じました。

今回の講義を通じて、東洋医学が日々の体調管理においても役立つことを知っていただけたら嬉しいです。

これからも、このような機会を通じて東洋医学の魅力を伝えていきたいと思います。

がん患者さんの症例検討会をしました

毎週月曜日は、スタッフ全員で集まり勉強会を行っています。

本日は「がん患者さんの症例検討」をテーマにディスカッションを行いました。

ある進行したがん患者の症例をみんなで共有しました。

さまざまな治療を試したが、がんの勢いは抑えられず、現在は治療による副作用で苦しまれていました。

患者さん一人ひとりのがんの進行度や、治療内容を深く理解することは、治療者としてもっとも基本です。

それ以上に重要なのは、患者さんの「苦しみを少しでも緩和するために何ができるか」を考えることです。

今回の症例では、鍼灸治療を通じて、がん治療に伴う吐き気の軽減や精神的苦痛の緩和が認められました。

東洋医学の視点は、西洋医学の治療を補完する役割を果たし、生活の質(QOL)向上に貢献できる可能性を改めて実感しました。

しかし、がんが進行するにつれ、鍼灸の効果が次第に薄れていく現実にも触れざるを得ませんでした。

それでも、私たちはこの症例を通じて、「患者さんにとって最も良い治療とは何か?」という問いに向き合い、さまざまな視点から検討を重ねることができました。

多くの苦しみを抱える患者さんに対し、何ができるかを模索し続けることが、治療者としての使命だと改めて感じた時間でした。

中部大学CAACでの東洋医学講義がスタート!

昨日は、中部大学のCAAC(中部大学アクティブアゲインカレッジ)で、非常勤講師として東洋医学の授業を行いました。

今年もお声掛けいただき、16名の参加者の皆さんとともに東洋医学の魅力について学ぶ時間を共有できました。

今回のテーマは「東洋医学で考える健康と養生」。

健康意識の高い方々が多く、皆さん熱心に耳を傾けてくださり、講義の途中では多くの質問が飛び交いました。

参加者の皆さんが興味を持ってくださっているのが伝わり、とても嬉しかったです!

東洋医学の考え方が、日頃のケアに役立つきっかけになればと思います。

そして来週はいよいよ実技編に入ります。

鍼灸治療を実際に体験し、東洋医学の「未病を防ぐ」という考え方が、どのように体に影響を与えるのか、

みんなで観察していきます。

実際の施術を通して、体の変化を感じてもらえる内容にしたいと思っています。

これからも、東洋医学を通じて皆さんの健康に貢献できるよう努めてまいります!

足三里(あしさんり)の効果はすごい!

足三里(あしさんり)は、胃腸の調整や体力回復に効果があるツボとして知られています。

ツボのことはよく知らないけど、なんとなく名前は聞いたことあるというかたは多いのではないでしょうか。

先日放送された、NHK「トリセツショー」でも取り上げられていましたね。

足三里は「副腎」という、ホルモンを分泌する器官を介した抗炎症効果があり、今とても注目されています。

足三里を鍼や灸で刺激すると、副腎から「コルチゾール」という抗炎症作用ホルモンが分泌されることが研究で明らかになっています。

コルチゾールは、炎症の原因となる物質を抑える働きをし、組織の炎症を和らげてくれるのです。

これにより、リウマチによる関節痛、アレルギー、アトピーなどの自己免疫疾患の緩和に期待できます。

また他にも、足三里は「オキシトシン」という、通称「幸せホルモン」の分泌を促し、ストレスを緩和させる効果があります。

これにより、ストレスによる痛みや不安、抑うつ症状の改善にも期待されます。

このように足三里のツボを使った鍼灸治療は、身体の自然な力を活かして炎症やストレス反応を整え、体調を安定させるサポートをするのです。